『わたしのれんきゅー』メール,ありがとうございました。楽しませて頂きました

 たまにはベースの話でも。

 

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 ヤマハでベースを教えるようになってそろそろ3年になります。今までレッスンをしていく上でいろいろな事に気付かされてきましたが,そのうち特に印象に残っているのは一見簡単に思える「ある奏法」が,経験の長短に関わらずほとんどの生徒があまり上手にできないことです。

 …その奏法とは「スタッカート」。全ての楽器に共通の「音を短く切る」というアーティキュレーションですが,当然それぞれの楽器の構造によって物理的な奏法は変わってきます。ベースギターの場合は一旦弾いた弦の振動をすぐさま(主に左手の指で)止めるわけで,例えば「ミディアムテンポの4分音符を8分音符程度の長さにする」くらいならたいていの生徒はすぐできるのですが,これを16分,32分…と音価を短くしていくと途端に落伍者が続出,「弾いた瞬間に音を止める」ということになるとほぼ全ての生徒が脱落します。

 この技術自体は決して難しいものではなく,少し練習すればすぐできるようになる類いのものです。ただ<スタッカートやテヌート(音を長く保つ)などがベースラインのグルーヴ感におよぼす影響の大きさ>に自分で気付く生徒はそういないので,スタッカートの練習を自発的に練習する事もあまり無いため最初はみんな巧く弾けないだけなんだと思います。

 

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 「空(から)ピッキング」という奏法があります。ギターやベースで,左手で全ての弦に軽く触れて余韻を殺したまま右手で弦を弾き,音程のないパーカッション的な効果を出すという奏法で,たいていの場合譜面上では音符の符頭が×印で表されます。

 30代半ばで夭折したジャコ・パストリアスという天才ベーシストがいますが,ジャコと言えば空ピックを多用した16分音符の独特のグルーヴを思い浮かべる方も多いと思います。が,実際にはベースの指弾きの場合空ピッキングは音圧に乏しく,バンドサウンドの中で埋もれない音を出力するにはかなりの力が必要です。ジャコの演奏などを聞いていると空ピックと思える音にも微妙に音程感があり,むしろ空ピックと言うよりは「極端に短いスタッカート」という風に思えます。音程があるので空ピックよりも存在感がありグルーヴも強力になりますし,アンサンブルの中でもコード感や調性感を損いません。上記のような記譜を見たら,ホントは下のように弾いた方がカッコイイのかも知れませんね。いくらスタッカート自体が難しくないと言っても,ここまで自由に音価をコントロールするのはやはり至難という気がしますが。

 

 結論:ジャコすげー。終わり。

 

 

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