或る日の長文日記

 ●「Live Info.」に8件追加。

 某月某日。所用があって午前中からスタジオジャイヴに行かなければならない日。ここんところ朝10:30頃に起きる普通にミュージシャンっぽい生活サイクルになっていたため7時起床のハードルはかなり高く,二度寝の末大慌てで8時半に自宅を出発。幸い道が空いておりかなり早めにスタジオに着いたので車を停め機材を降ろしたあと朝食を調達しに近所のコンビニへ。歩きながら「あれ何か歩きにくいな,左右の足の長さが違うような」と思い足元を見ると

左 右 違 う 靴 を 履 い て い る 訳 で す が

 …しねえ。普通しねえよダンナ。いや万一やらかしたとしてもですね,玄関を出て2,3歩歩いたら気づくでしょ普通。家を出て車に乗って小一時間運転して目的地に着いてから気づくバカがどこの世界に居ますか(ここに居る訳ですが)。まぁ不幸中の幸いだったのが左右とも黒の革靴という点では共通しており多分自分から告白しなければそうそう気づかれない状況ではあったのだけど,野呂さんはじめ関係諸氏が到着するとこのバカバカしさを周囲に伝えずにはいられなくなってしまい,ついつい「ちょっと今日のオレの靴見て下さいよ」と余計なカミングアウトをしてしまう私。首尾よく(?)ひとしきり笑われたあとマネージャーの井上さんから「いったい玄関どうなってるんですか」という至極真っ当なツッコミが。「いやぁウチ猫が2匹も居るもんで」という返答は苦しい言い訳に聞こえたかもしれないけれど,実際ウチの玄関は直線の廊下と直結しているので猫が廊下を全速力で走って来て綺麗に靴が並べてある土間にヘッドスライディングなんて事は日常茶飯事なのです。互い違いの靴もきっとそのせいだ。そのせいだと思いたい。


スタジオジャイヴ駐車場にはツバメの巣が

 さて内輪のスタジオ仕事だけで一日が終わるのなら靴もこのままでも良かったんだけど,具合の悪い事にこの日は夕方から別の場所でライブの仕事が入っており,このまま何の対処もしなければ靴が微妙にちぐはぐなまま人前でベースを弾くという恥ずかしい罰ゲームが待っている訳。でも大抵ベーシストは立ち位置がフロントの後ろだし,靴の違いも遠目には判らないような差異なので「今度は靴の事は黙っていて,もし誰も気がつかなかったらそのまま演奏を強行してみよう」という無謀なプランを立ててみることに。ところが,現地集合を命じた目ざとい私のボーヤが「靴…」などと即座に気づきやがったので強行プランも即終了。リハが終わったあと本番までの空き時間に新しい靴を買いに行き,駅ビルのトイレで靴を履き替えてやっと晴れやかな気持ちになり,「線対称って気持ちいい~」などと訳の分からない事をほざきつつボーヤと「つばめグリル」で夕食。上機嫌でお店に戻ると開演前なのに客席が1テーブルしか埋まっておらず,しかもよく見るとその1テーブルは出演するミュージシャン連中でありみんな必死で携帯メールを打っているの図。何をしているのかと思ったらみんな近所に住んでいる友人知人に片っ端から「ライブ見に来て」と懇願している訳。要はお店が今月オープンしたばっかりでその存在自体が近隣にあまり周知されていないという事らしい。私も携帯で某BBSに「見に来て」という趣旨の一文を書き込んでみたものの,友人は誰一人現れずオノレの人徳の無さを思い知らされる結果に。開演時刻を過ぎても客席は我々以外無人の状態が続き「お客さんが来たら始めよう」という消極的な段取りが発表され,私が新しく買い求めた靴の存在意義も危うくなりかけた頃にようやくちらほらと来客の兆しがあり,どうにか演奏を済ませて格好がついた一日だったのでした。靴とつばめグリルの代金を足すと赤字すれすれの一日だったけれど,靴はどうせ消耗するんだしハンバーグは喰いたかったんだから仕方ないと自分を納得させつつ帰宅。新しい靴の箱からちぐはぐペアの靴を取り出し,玄関に持って行って靴を整理してリビングに戻ると前日まで洗い桶で寝ていたウメが靴箱の中で寝ており脱力。四角ければ何でもいいのか貴様は。


お し ま い