やぢまはほとんど家でしかお酒を飲みません。
…という話を仕事仲間にすると大抵驚かれます。逆にこっちから「家でよく飲んだりする?」と仕事仲間に尋ねると大抵「家ではあんま飲まないなぁ」という答えが返ってくるので,なるほど普通はそんなものなのかと思ったりします。
私とて「家で飲む」と言っても飲む量は知れたものです。一人暮らしを始めた頃は週に2~3本のウィスキーを消費していましたが,ここ数年は週にコップ1杯飲むか飲まないかくらいになってしまいました(ホント安上がり)。「家でしか飲まない」というのは相対的に「外でほとんど飲まなくなった」という意味であって,これは演奏の仕事がほぼ100%車での移動であることに起因します。
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お酒といえば学生の頃よく一緒に酒を飲んだ悪友がいました。特に名は秘すものの安井君という友人で,金もロクにないくせに二人して飲み屋をはしごしては泥酔し,気がつくと知らない自転車に二人乗りしていたり東横線の高架線路の上を歩いていたりして仲良く遊んだものです。その頃は私も彼も荻窪に住んでおり,西荻窪の駅前の汚くてうるさくて安くて旨い焼き鳥屋が二人の行きつけの店でした。
私が妙蓮寺に引っ越し,安井君が出版社に就職してからはお互い急速に疎遠になってしまったのですが,1年程前に荻窪の近くに来る用事があったので夜中に彼の家に電話をかけてみたんです。「おぉ俺だけどさ,今近くにいるからちょっと会おうぜ」「あぁいいよ」
学生の頃から住んでいたアパートから出て来た彼は昔よりずいぶん太っていたので驚いたのですが,実はこれが彼のデフォルト状態であり学生の頃は単に貧乏だったために栄養失調で痩せていただけなんだと後から気付いて大いに笑。まぁそんなことはともかく。
やぢま「じゃあ軽く飲みに行こうか」
やすい「あ,あのな,今俺に飲ませると殺人罪になるから」
やぢま「…はぁ?」
…聞けば。
学生の頃極貧だった安井君も就職して急に金回りがよくなり,かと言って金を使う趣味などもなかった彼はそれまで思うように飲めなかった酒を毎日思う存分飲み続けたんだとか。ホントに他にすることもなくただ毎日酒を飲むだけの生活を送ってたら「気がついたら勝手に100万貯まってた」。まぁそんなことはともかく。
んで,ある日の健康診断でγGTPが素敵な数値になっていたとかで,医者に行ったら「あんたこれ以上飲んだら死ぬよ」って言われた,と(アルコール性肝障害)。全然同情はしないものの後で「やぢまのせいで安井は死んだ」とか言われたら寝覚めが悪いので「しょうがねぇなメシだけ喰いに行くか」とデニーズへ。
ウェイトレス「御注文お決まりですか?」
やすい「ビール」
…別に死んでも構いませんよ君。
やぢま「じゃあ今は酒断ってるわけ?」
やすい「うん一応。でも今日お前が来る前○○さんに誘われて飲みに行ってた」
…別に死んでも構(略)
やすい「以前冬のさなかに飲んで帰った時さ,泥酔してんのに家のカギなくしてんのよ」
やぢま「ほうほう」
やすい「んでアパートのドアの前で力つきて倒れこんでよ,『あぁ俺ここで凍え死ぬんだ』って思った」
やぢま「…(そのまま死ねば良かったのに)」
やすい「そしたら隣の部屋の人が帰って来て。『だいじょうぶですかぁ?』とか明るく言って俺のこと跨いで行きやんの」
やぢま「(笑)」
やすい「 俺必死で頼んだよ,『すいませんホント死にそうなんで土間でいいから寝かせてくれませんか』って」
やぢま「そしたら?」
やすい「そしたら入れてくれたんだけどホントに土間で寝かせやがってよ,ヒデエ奴だよなオイ」
やぢま「…(俺なら120%放置だぜボケ)」
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結局この日は2時間程バカ話をしただけで彼と別れたんですが,それから1年程経った今彼が生きているのかどうか噂一つ聞きません。その後も飲み続けているんならそのうち肝硬変にでもなってアノ世行き…という必勝パターンを踏んでいるはずですが,何だか止める気にもならないし「アイツは多分死なない」という根拠のない確信もどこかにありまして。「友達が死にかけているのに何て不謹慎な」などと怒られるかも知れませんが,もし奴がこの文章を見たら「もっと面白く書けバカ」くらいの感想しか漏らさないと思います。人からタダで譲ってもらったというPCを「1回も箱から出してねぇ」という彼がここを見ることなど永久になさそうですが。
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