港区にある東京タワーの横にタワーサイドスタジオというレコーディングスタジオがあるのですが,先日お仕事でそこに出かけた時に入り時間より少し早く着いてしまったので機材を搬入したあとゴハンを食べに出たのですよ。ところがスタジオのあるビルの周辺はあまり食べ物屋さんが無いので,おそらく何か食べられるであろう東京タワーの中に入ったんです。道を渡った真ん前だしね。
時間が朝10:00と早かったので中に入れるのかどうか危惧されましたが2階のレストランフロアはもう開店していて,修学旅行の団体がお土産屋などを物色していて結構な騒ぎ。ところが何も考えずに最初に見つけたそば屋に入ると扉は開けっ放しだし客は居ないしテーブルの上に古新聞とか置いてあるしで「いらっしゃいませ」オーラゼロ。おいおいフロアが開いてるのに店は準備中かよ…などと店内に足を踏み入れると厨房の中でドングリ眼のヲッサンが何やら立ち動いている模様。「すみません」と声をかけるとヲッサンの動きが止まりやぢまの顔を見据えてそのまま硬直しやがりました。顔には「なんで 客なんか 来るの」と書いてあります。「まだ開いていないんですか」と尋ねるとヲッサンの顔がゆっくりと厨房の奥の方を向いて再び硬直しました。何だ気色悪ィ,ロボットか貴様は…と言おうとした瞬間に奥から店主らしき初老の男性が出てきて「何? …あぁお客さん? もう開いてますよ,その辺にどうぞ」などと言って乱雑に新聞をどけてくれたりしました。住宅街とかによくある風前の灯のごとき店ならいざ知らず,おそらく外国人などもよく訪れるであろう東京屈指の観光スポットにある日本そば屋がやる気ゼロ度全開。ひょっとしたら日本が世界に誇る食文化「日本蕎麦」の国際的な評価をこの東京タワーにある1軒の店が凋落させているかも知れません。店の隅に腰掛けたとたんこちらのテンションも下がってしまい「ざる蕎麦とちらし寿司のセット」などと注文する自分の声が遠くにいる他人の声のような気がします。あぁこれからレコーディングというシビアな仕事に赴くというのに店のやる気の無さがオレに移ってしまった…などと寝不足の頭で考えているとさっきのドングリ眼が蕎麦とちらし寿司の乗った盆を持ってこちらにやってきました。ヲッサンはテーブルに俺の朝食を乗せ,「なんで 客に 蕎麦なんか 出すの」という顔のまま一言も述べずに厨房に戻って行きました。
その日のレコーディングはとても集中してできました。
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