K-1 GPをDVD録画したら決勝戦だけ入ってなかった(泣)

 うわ。かつてないほど更新が途絶えていましたスミマセン。

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 本を読んでいて無性に食欲をそそられるってこと,ありませんか?
 本と言ってもグルメ誌とかそういうのではなく,小説や随筆で登場人物がモノを食べるようなシーンを読んで,その筆力につい自分までお腹が空いてきてしまうというような経験の事です。
 やぢまも最近はとんとご無沙汰ですが,妙蓮寺で一人暮らししていた頃は本を読む時間もたくさんありましたし,食欲を触発されてはそのまま本をもって同じものを食べるため駅前までふらふらと出かけて行ったものです。

 高村薫「神の火」で,ソヴィエトのスパイたる主人公が西成の大衆食堂に入り冷凍庫で冷やしたウォッカを啜りながらアツアツの野菜炒めを食べるシーン。
 中島らも「今夜,すべてのバーで」で,アル中の主人公が病院を脱走してそば屋へ行き,禁断のビールを飲みながら天ぷら蕎麦を手繰るシーン。
 筒井康隆「敵」で,一人暮らしの老人が大好物の韓国冷麺を作って食べるシーン(以前にもmeditationでご紹介しましたが)。
 
 妙蓮寺なんて東横線に乗った事のある人しか知らないような弱小駅ですが,駅前にはそこそこ旨い野菜炒めや天ぷら蕎麦,韓国冷麺を食べるのには十分事足りる小さな商店街があり,何も予定のない日に食堂のテーブルで小説と同じものを食べ,また家に帰って続きを読むというのは何にも替えられない至福の時間でした。文庫本を片手に駅前までを往復するひとときは雨の日も晴れの日も本当に幸せで,こんな日がずっと続けばいいと虫のいい事を考えていたりしたものでした。これだから最近の若者は。

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 歴史小説の大家,吉村明氏の超大作「ふぉん・しいほるとの娘」を読了したのは妙蓮寺を離れてからですが,シーボルトの娘お稲が学問を授かるために滞在した伊予の蘭方医,二宮敬作の自宅で「サツマ」という地方料理を振る舞われあまりの旨さに頬を落としたという下りを読んだときも一も二もなく「その『サツマ』を食べてみたい」と思ったわけです。が,よくよく考えてみれば史実に基づいた内容とはいえフィクションなのですし剰え150年も前のエピソードです。旨いそば屋や中華屋さえ近所にない今の住まいではそんな珍しい食べ物を簡単に探せるはずもなく,そのうち私も「サツマ」の事は忘れてしまい四国に遊びに行く事が決まっても二宮敬作が伊予に住んでいたという事をすっかり忘れてしまったままでした。
 その四国旅行で「さつま定食」を食べられたのは旅先で暇つぶしに読んでいたガイドブックのおかげだったんです。紹介されていたのは宇和島の「かどや駅前本店」という食堂で,写真が載っていたのは鯛飯だったのですがキャプションに「鯛飯1790円,さつま定食1050円」などと書かれているのを見つけ「こっこれがあのサツマに違いない」と確信し,松山から中村に行く途中の宇和島駅の乗り継ぎ待ち60分を利用してあたふたと店を訪れたんでした。開店30分前だったにもかかわらず親切な店員さんがお店に入れてくれたおかげで,実は現在でもこの辺りでは郷土料理として名高い「さつま」定食をおいしく頂く事が出来ました。つきあわされた家族にとっては単なる珍しいゴハンだったかもしれませんが,私にとっては大いに有意義な思い出深い一日となったわけです。

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 肝心の「『さつま』とはどういった料理なのか」をご紹介するのを忘れていました。ここに出ているような「さつま汁」を麦飯にかけて頂くのが小説にも出てきた「さつま」なんです。ちなみにサツマイモの入った鹿児島の「さつま汁」とは全く別のレシピです。

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