後列左からクラッシャー木村 (vln.) さん,Ema (vo.) さん,Keiko (pn.) さん,はたけやま裕 (perc.) さん
前列で鼻の下伸ばしてんのが私 (bs.)
上の写真は去年12/6,銀座Swingでのセッション終演後の記念撮影。2015年最初の貴様の写真はコレか…と呆れられそうですが,単に美女に囲まれて幸せだった(笑)というだけでなくライブそのものが何と言うか奇跡的な完成度(演奏そのものだけでなくライブ会場の全体的な雰囲気が)であり,単発のセッションでは去年最も印象的だったライブでした。
Swingは2セットの場合80分×2なのでライブ全体の尺はかなり長いのですが,途中からいらした団体さんを含め,ほぼ満員のお客さん全員がアンコールの最後の1音までもの凄い集中力で聴いておられたのです。お食事のおいしいお店ではレストラン代わりに来られるお客さんも居るので満員になると多少客席がざわつく事もあるのですが(個人的にはそれを是としているわけではありませんが),パーマネントなバンドでは無い単発のセッションで,曲は持ち寄りでコンセプトも特に決めておらず,スタンダード曲も特に多くもないライブでこれだけ沢山のお客さんを160分間最後まで引きつけられるのかと驚嘆するほかありませんでした。演奏者としての手応えも単に楽しいというだけでなく才媛4人の演奏と立ち位置の選び方の巧さに「なるほどなぁ」と舌を巻きながら弾いていた,という感じ。160分弾き終えてもいつも感じる疲れは無く,ただ「おぉ〜…」という感嘆と充実感が残るのみでした。
正直に言いますと,ここ最近私は単発のセッションというものに対してある種の諦観みたいなものを持っていたので,この日それを覆された事が衝撃的に嬉しく,帰り道それはなぜなのかと色々考えさせられました。私自身演奏者であり批評家ではないので,才媛4人のどこが素晴らしいなどという事をあまり詳しく言葉にする事は憚られますが,漠然と言うなら皆「変な自己主張をしない」って事でしょうか。特筆すべきはクラッシャーさんの歌ものでの絶妙な絡み,そしてEmaさんとKeikoさんの真摯なMCでした。とくにEmaさんの堂々たる立ち振る舞いはとてもメンバー中最年少とは思えなかったのですが,後で訊けば幼少の折からミュージカルの舞台にずっと立っておられたのだとか。納得です。
結局,演奏が素晴らしい事は大前提として,きちんと音楽全体を見渡せる人が全員集まればセッションでもバンド並の完成度になるし,その相性によってはたまたま来たお客さんが釘付けになってしまうような奇跡の音楽が生まれる可能性もあるんだという事かもしれません。そんな良質なセッションにするにはただ演奏が巧いとか,仲が良いジャズミュージシャンを無作為に集めただけではダメで,(音楽的に)自分の話をするばかりではなく他人の話もちゃんと聞けてフォローできる様な人,自分の欲求の為では無く音楽の為に音楽が出来る人が集まる事が必要なのだと思います。そしてそれは,究極的にはセッションだけではなくバンドに於いても同じなのかもしれません。
現状では日本はまだまだ好景気とは言えないのかも知れませんが,たとえこの先景気が良くなってきたとしても従来型のスタイルのジャズセッションがだらだら行なわれているだけではジャズのファン層が拡大して行くとはとても思えません。しかしこの4人の才媛の様なメンバーが集まるセッションなら,一見のお客さんでも160分の長丁場を飽きずに楽しんで行ってくれるし,きっと次のライブや他のライブも見に来てくれる事でしょう。ショウとしてのライブの全体像を顧みず,メンバーが気の済むまで延々ソロをやるだけのジャズセッションが仕事として成立する時代は,もうとっくに終わっているのかも知れません。