先日,私が最も尊敬していて昔から大変お世話になっているピアニストのご自宅に打ち合わせに行った。お会いするのも1年ぶりだったので打ち合わせのあと仕事やプライベートの相談にいろいろと乗って頂き,自分の煩悶をかなり解消することが出来たので本当に有り難く思った。
思えばミュージシャン同士でゆっくり呑み交わすことなんて旅仕事の時くらいしかないし,よしんばそういう時でも誰にでも何でも話せるという訳でもない。さすがに「宴」の二人とは何でも忌憚なく話せるけれど,こちらから彼らの私生活を詮索するようなことはもちろんないので,私はあの二人の日常について意外なほど何も知らないのだ。
ミュージシャンにも色々なタイプの仕事人がいるので誰でも相談相手になりうる訳ではないのだろうけど,自分とスタイルの近い仕事仲間はやはり自分にとって大事な存在なのだと思う。私たちの仕事は生活スタイルやメンタリティーも独特なので,きっとそういう仲間は仕事面だけでなくプライベートな問題を相談する上でも大切な存在に違いないのだ。もちろん必ずしも「同じ職種の人間以外は相談相手たり得ない」とは言えないけれども,例えば「フリーランスである」 「モノを創ること・技術を売ることが生業である」「人前でする仕事である」そして何と言っても音楽という「形(媒体という意味ではなく)のないものを創っている」…等といった属性を理解してくれるような,あるいは理解できなくてもそれらがどういった苦しみ・楽しみなのか想像を巡らせ てくれるような相手でないとなかなか話し合っても気持ちが通じ合うのは難しいのだろうなと思う。
「宴」に限らずミュージシャン仲間にはそれほど相談事を持ちかけない自分だったけれども,ここ最近はそんなこともあり仕事仲間のありがたみを身に沁みて判った年始だった。毎年,年が明けたくらいではさしたる感慨も持たなかったけれど,今年は何か仕事と私生活の両方に新たな気持ちで向き合えそうな気がする新鮮な年明けだったように思う。私はどちらかと言うと人見知りな方なので誰にでもすぐに心を開くようなことは出来ないけれど,仕事仲間で本当に「仲間」と思える人物は大事にしなきゃ…などと改心(笑)した2011年初頭だった。