「ゆう・ゆう・けんと」と「花吹雪」

20171028

 はたけやま (perc.) ,箭島治 (bs.) ,扇谷人 (pn.) によるトリオ「ゆう・ゆう・けんと」ツアー10公演が無事に終了し,横浜に戻る車中でこれを書いています。

 このトリオが元々,ヴァイオリン界の最高峰の一人である古澤巌さんのサポートバンドが出発点だったという話は今まであちこちでしてきたと思います。殊にMCでよく私やはたけやま女史が「古澤さんの無茶振りが半端なくて,それを一つ一つ乗り越えることで3人の結束が固まった」という話を強調してきたと思いますが(それももちろん真実なのですが 笑),それよりだいぶ前から3人とも互いに他の2人をよく知る間柄だったことを考えると,ひょっとすると古澤公演を経て3人それぞれの,他メンバーに対する印象が何か良い方向に変わったのかな,という気もします。そうでなければもっと前から「バンドやろうよ」的な話があったとしても不思議でなかったはずですから。
 では3人それぞれの,戦友に対する印象がどのように変わったのだろう…という話になるとこれは音楽的・専門的な話になってしまい,ここで皆さんにお話しするような事でもなくなってしまいますが,今回のツアー10公演を経て私は更に3人が,また互いに戦友たちの印象を新たにしたのではないかと思います。それが良い方だったか悪い方だったかは2人に訊いてみないと検証はできませんが(笑),ツアー終了後早くも次のツアーのブックが始まっていることを考えるとその答えは自ずと出ているのかもしれません。

 このトリオのツアーに於いて私がメンバー二人にとても感謝していることがあります。それは,ピアノトリオ「」時代の私のオリジナル曲「花吹雪」を一緒に演奏してくれたことです。
 「花吹雪」は私がインストの自作曲の中で最も気に入っているものの一つですが,テンポが速くアレンジも細かく楽譜も4ページあるため,単発のセッションに持ち込むにはかなり難のある曲で,実際「宴」以外では奥本めぐみさんとのセッションでわずかに1度演奏したことがあるだけです。また基本的にはピアノトリオ用の曲なのでBoot Funkとは編成が乖離しており,「宴」をやらなくなってからはこの曲を人前で演奏できる機会はほとんどありませんでした。
 しかし昨年11月,「ゆう・ゆう・けんと」と同一メンバーのライブを「扇谷研人トリオ」名義で敢行した際,研人君がかなり難しいオリジナル曲「Face the Mind」を候補曲として提案してきたのですが,とても事前リハ1度ではできそうに無いその難曲を本番で演奏してみて,私はこの3人に対してバンドとしての何らかの新たな手応えを感じました。それは譜面が読めるとかグルーヴが合うといった音楽的スキル以前の,メンバーのオリジナル曲に対するリスペクト,そしてそれを完成に導く事への執念のようなものだったように思います。
 かくして今回のロングツアーの前に私が「少々煩雑で申し訳ないのだがやってみたい曲がある」と言って「花吹雪」の資料を二人に送り,二人が二つ返事で引き受けてくれたおかげで久々にこの曲を皆さんに生でお聴かせできる事が出来ました。殊にこの曲はピアノの負担が大きいので研人君は本当に大変だったと思いますが,1日ごとにより良い演奏にチャレンジしてくれる彼の姿勢には頭が下がる思いでした。またもともとドラムセットを想定されているこの曲のグルーヴを,全くスポイルする事なくパーカッショニストならではの解釈を見せつけてくれた女史には,もう正直言ってぐうの音も出ませんでした(笑)。

 各公演の様子は私以外の二人が各SNSにまめにレポートしてくれているのでここでは詳らかには致しませんが,兎も角はたけやま女史と扇谷君という二人の,穏やかで真面目で自分に厳しく,音楽に自分の人生を賭している仲間二人と長旅を回れたことは本当に良かったです。また今回のツアーのサポートスタッフを買って出た若きパーカッショニスト福岡高次君の底抜けに明るい性格もツアーをより良いものにしてくれました。演奏はもちろん,移動,打ち上げ,散策,ふくろうカフェ(笑),…本当に,楽しい思い出しかありませんでした。

 「ゆう・ゆう・けんと」というユルい(笑)バンド名が付いた,凄腕の新たなピアノトリオ。バンマスが日本で一番忙しいパーカッショニストの一人であるにもかかわらず,今後もちらほらライブやツアーがブックされそうな気配です。これ,本当に凄い事です。

20171028
高松の名店,Speak Lowにて。
左から箭島裕治 (bs.) ,はたけやま裕 (perc.) ,扇谷研人 (pn.)

20171028おまけ写真。ミミズクと私