以前のエントリーで少しお話しした「スパニッシュ・コネクション」のツアー38公演が,残りわずか3公演となった時点でこれを書いている。
「旅の余暇にやっといてくれる?」と頼まれて二つ返事で預かっていた譜面の校正が,今頃になってやっと終わった。24日間もツアーに出てりゃ暇な時間なんて結構できるだろ…と思ってたら実際は割と毎日忙しくて,他にもやろうと思っていた来月の予習などがほとんど進んでいないまま月末を迎えようとしている。帰京したらゆっくり休みたいところなのだが,残念ながら10月も死ぬほど予定が詰まっており,まず1日の午前中からリハーサルが入っているという非情さである(笑)。何にせよ,お仕事があるのはありがたい話なのだが。
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さてSNS等でアナウンスされている通りツアー途中でヴァイオリンの平松加奈女史が体調を崩され,和歌山1公演と四国4公演を急遽お休みされたのだが,昨日の京都公演に無事復帰され再び演奏を共にすることができた。これを重畳と呼ばずして何と呼ぶのだろう。
女史がお休みされた5公演のうち,最初の和歌山だけは本当に急遽だったので曲目そのものをトリオで演奏しやすいものに替えて演奏したのだが,残りの4公演はできるだけプログラムを変えずにヴァイオリンのパートをベースやギターに割り振ることで他の公演とのコンセプトの乖離を避けた。入念に準備した甲斐あって主催者様やお客様から大変ご好評をいただいたが,個人的にはいろいろな曲のヴァイオリンのパートを自分で弾いてみて愕然としたことがあった。とある曲の全く平易な3拍子のメロディーが,一人では弾けるのにアンサンブルで合わせてみると全然譜割り通りに弾けなかったのだ。専門的なことはここで書いても詮無いので割愛するが,結局自分はスパニッシュ・コネクションの扱う3拍子のリズムを,譜面上では理解していても体感では全く理解できていなかったという事を思い知らされたのだ。
女史が復帰された昨日の京都公演は,恐ろしいほどスムーズにリハーサルを終える事ができた。一つは会場であるRAGの音響を担当する野路さんの素晴らしい手腕,そしてもう一つはフラメンコ音楽を知り尽くしている平松女史が居られる事による音楽的な安心感によるものが大きかったように思う。本番は観た人/関わった人全てにとって感慨深かった事と思うが,自分にとってはトリオでの演奏を経て「自分はまだ振り出しから一歩も外に出ていない」と思い知らされたその視点で,改めてこのバンドのアンサンブルについて考えさせられた事が大きな感慨だった。自分にとってのツアーは,やっと今始まったばかりなのかもしれない。