鍵っ子イージーミス<その3>

 (<その2>より続く)

 幸いにしてヨメの会社はウチの最寄り駅から30分圏内とそう遠くありません。電車に乗る前に相手の携帯に「これこれこういう訳で今からそっちにカギ取りに行きます」的なメールを打ち発射。すぐに気がつくかどうかは判りませんが,何せヨメの会社を訪れるのは初めてであり予告くらいしておかないと相手が腰を抜かすのは間違いありません。こっちも同僚の皆様にアホ面さらすのは恥ずかしいですが背に腹は代えられないとはまさにこの事です。

 会社近くの駅で降車し携帯を取り出すと今度は充電がヤバい事に。こんな事なら帰りの新幹線でパワプロで遊んだりしなきゃ良かった…などと悔やんでも後の祭りです。駅近くのコンビニで充電器と水分を買い,改めてヨメに電話。しかし通じず。まいったなーこれじゃ抜き打ちで会社に登場するしかないぢゃん,しかも「家ニ入レナクテ鍵ヲ借リニキマシタ」とかバカ丸出しなんだけど。いや待てよ「実はヨメ会社に来てなかった」とかいうオチで詰んだらどうすんのオレ…などと少々不安に。気温は更に上昇し完全に真夏の暑さとなり,電車の冷房で乾いた体は一瞬で汗の化身となりました。最寄り駅と言っても会社までは少し歩かなければならず,体力を消耗する前にヨメの所在を確認しておこうと思い会社に電話して本人を呼び出してもらう事にしました。

  社 「お電話ありがとうございます,株式会社○○○です」←若い男性社員の声
 やぢま「あのすみません,そちらにおります『やぢま』という女性社員の家族の者なんですが」
  社 「はい」
 やぢま「き,緊急の頼み事(泣)がありますので本人の呼び出しをお願いしたいのですが…」
  社 「はい少々お待ちください」

 保留音。考えてみれば私はヨメの部署も会社の規模もよく知らないのですが,名字と性別だけで果たして本人にたどり着けるのかどうか心配になってきました。仮に本人にたどり着けたとして,「家族」から「緊急」の電話だと告げられたらきっと急な不幸かなにかを想像して相当焦るんじゃないでしょうか。そこへ 「ゴメン鍵無くしたから貸して」とか言ったら私の方が「急な不幸」にされるかもしれません。果たして,割と待たされた後に電話に出てくれたのはさっきの男性社員さんでした。

  社 「あのすみません,やぢまさんなんですが」
 やぢま「はい」
  社 「今日・明日と研修に行っておりましてこちらにはいないんだそうです」

 

つ,詰んだ

 

  社 「申し訳ありませんが携帯に電話してみて頂けませんか」
 やぢま「じ,実は携帯がつながらなくてこちらにお電話した次第なんです」
  社 「そうでしたか」
 やぢま「でももう一度連絡とってみます,お騒がせしてすみませんでした」

 電話を切り恒例の呆然タイム。そういえば最近はたびたび「研修で○○に行ってた」とかで出先から帰ってきてたりしてたんだっけ。確か地方から帰ってきた時もあったような…って地方? もし今日地方に行ってたら当分帰って来ないんじゃ? 地方だったらどうやって鍵取りにいけば? いっそ名古屋まで戻って鍵を回収してきた方が早いんじゃ…でもさっき「発送してください」とか言っちゃったしなぁ。

 

… 風 呂 入 り た い(泣)

 

…<その4>へ続く。